きのこです。
『オンディーヌ』という映画を見ました。
アイルランドの漁港に暮らす漁師が、
人魚を釣り上げたことから始まるお話です。
冒頭、寒々とした色合いの、
右から左からちゃぷちゃぷと寄せる波、
一見して、豊かな釣果が期待できないな、
と感じさせる厳しそうな海。
入り組んだ海岸線はごつごつして、
低い草が生えるばかりで、
生命力を感じる樹木もない。
これはまさに、わたしの好きな、
あの感じ、アイルランドっぽさ。
岩と草、未舗装の道に、
強く冷たい風が吹きつけているだけの、
あこがれのあの景色。
実際にアイルランドかどうかは、
そんなに大事ではなくて、
あくまで「っぽさ」の話で、
自然の景観、街の雰囲気、
そこに住んでいる人たちの雰囲気、
ストーリーが、
総合的にアイルランド「っぽい」ことが大事で、
そんな映画をいつも探しています。
ジャンルもはっきりしなくて、
上手に説明もできないけど、
たとえば、
『シッピングニュース』
『ロブスター』『さざなみ』
みたいなもの。
全体のテンションはやや低めで安定、
絵面的には暗めで地味め、
ストーリーの展開も重めで遅く、
結末としても大きくはじけない、
味わい深い感じ。
見る人によって、
引っかかるエピソードが違ったり、
言い合う感想がまるで違う映画のようだったり、
結末でさえ、見る人によって、
意味合いが変わってくるような映画。
どなたか、このような映画が、
なんというジャンルで括れるのか、
ご存じの方がいたら、
ぜひご一報いただきたい。
『オンディーヌ』
アルコール依存性の漁師(コリン・ファレル)と人魚、
ファンタジーから始まった男女が、
それぞれに抱える現実と偶然を、
少しずつ受け入れていく物語。
物語の終盤、漁師の告解を聞く司祭が言った、
「不幸になるのは簡単だ 幸せになるには努力がいる」
というセリフが、とても象徴的。